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2005年11月

自転車

 昨日会社から帰るとき、それぞれの自転車に乗っている、高校生のカップルとすれ違った。女の子が「途中まで一緒に行こうよ」、と言ったのが聞こえた。僕は歩きなので、自転車の方が早い。二人はゆっくりとだが遠ざかっていった。女の子のマフラーを見ていると、もう冬になるんだなと思った。
 フラフラと進む二人を見ると、手をつないでいた。自転車を乗りながら手を繋ぐ、見てて危なっかしかったが、その気持ちも分からんでもなかった。徐々に視界から消えていく二人。キスをしているのが見えた。もちろん、お互い自転車に乗っている・・・。
 彼女を車で送ったとき、別れ際に同じようにしていたことを思い出す。また会えると分かっていても、その日の別れはなにか寂しいものだ。なかなか唇が離せなかったのを思い出す。
 きっと彼らも、今日の別れの瞬間まで、手をつないでいるのだろうと思った。自分の左手に、ぬくもりを思い出していた。

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ポータブルMDプレーヤー

 P1000272

 MDに思い入れがあるのではない。それを誰にもらったのか、それ問題なのだ。店頭に並ぶメモリーオーディオ見るたび、買い換えたらと思う。だが、僕はこれを壊れるまで使うつもりだ。それが、彼女の為にできる、最後の事だからだ。
 クリスマスの次の日は僕の誕生日だ。2年前の誕生日にMDプレーヤーをもらった。当時の僕は体調が悪く、車の運転もできないほどだった。迎えに行けないから、彼女は電車で家に毎週来てくれていた。「体調がよくなったら電車で一緒に出掛けよう。待ち合わせの場所まで一人で来てもらうかもしれないし、その時に音楽を聴いて暇をつぶして欲しいから」。MDプレーヤーをプレゼントしてくれた理由はこんな感じだったと思う。
 「ラジオの方がよかったな・・・」。何でこんなことを言ってしまったのか。僕はバカだ。ニュースとか株式情報を聞きたかったから、前からラジオが欲しかったのだが。彼女は泣いていた。それから急速に彼女の気持ちが冷めていってしまった。その気持ちを察していた僕から、別れを切り出した。「ともくんこと、もう好きじゃないんだよね」そう言っていた。MDをもらってから半年後だった。別れの時、MDの事を謝った。彼女は「大切に使ってね。さようなら」、そう言って駅へ消えていった。呆然と後ろ姿を眺めていたのを覚えている。
 言われなくとも大切に使っている。何度か捨てようとしたり、オークションで売ろうと思ったが止めた。大切に使っているからといって、彼女が返ってくる事など無いのは分かっている。せめて彼女の気持ちにだけでも報いたい、と思っているからなのかもしれない。あと、懺悔の気持ちだろうか。


液晶に最後のトラック番号が表示されている。
人生がMDみたいに、あの言葉を発する一分前でいいから、頭出しできたらと思った。
「ありがとう、大切に使うね」、今度はこう言えると思うから。
MDはまた一曲目から、やり直して再生し始めていた。

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